京都府和束町。京都の最南部に位置する日本で最も美しい村です。和束は日本人のみならず海外のお茶ファンもその名前を知る宇治茶の最大の生産地であり、京都の茶葉生産の半分以上を占めるほどです。町に入れば、そんな数字も実感できます。右を見ても左を見ても、茶畑がどこまでも続く風景がそこにはあります。

そんな和束に私がおすすめする宿があります。農家民宿「えぬとえぬ」です。オーナーは茶葉農家4代目の北紀子さん。そうです「えぬとえぬ」は紀子のN、そして北(North)のN。北紀子さんの宿ということです。そんな北さん、学生時代まではお茶農家に生まれたことを恨んだこともあったそうです。彼女の誕生日は6月なのですが、6月といえば茶葉農家にとって一番忙しい茶摘みの時期。満足に自分の誕生日を家族にお祝いしてもらったことがなかったそうです。そんな気持ちに変化が生まれたのは成長して友人が自宅に遊びに来て、お茶のおいしさ、茶畑の美しさを絶賛したことだったそうです。初めて父母の仕事を見直したそうです。大学卒業後、京都府内にある金融機関に勤務したものの、お茶のよさを一人でも多くの人にわかってもらいたいという思いから、始めたのがこの宿なのです。その最大の理解者はお母さん。反対するお父さんの説得にも一役買ってくれたそうです。

宿に入ると、お茶の臭いがただよってきます。早速紀子さんが自家製のストレートティーでもてなしてくれます。実は我々が通常飲んでいる煎茶は農家から茶葉を買い取った卸業者が毎年味を一定化させるために他の茶葉とブレンドしているそうです。ですからなかなかストレートティーは飲めないとのこと。初めて知りました。しっかり納得できる接客がしたいということで、宿泊は1晩1組のみ(最大5名)。部屋はどこかしこに紀子さんのこだわりが感じられます。

お茶をいただいた後、食事の準備ができるまで、お風呂をいただきます。お風呂にもやはりお茶が。そして洗顔後に紀子さん特性の抹茶スクラブで顔をこするとお肌はつるつるです。

そして何といっても、この宿のこだわりの一番はお料理です。一言で言えば「おお茶懐石」。すべて紀子さん考案の手作りです。

どの料理も本当に美味しくて、食べ過ぎてしまいました。最近では泊まりに来るグループの約半分が口コミで訪れてくる外国人観光客というのも頷けます。

紀子さんの次なる夢は、お茶畑を眼前に見渡すことのできる高台にカフェを作ること。こんなところで一服できたらさぞ至福でしょうね。期待したいと思います。